工学鑑定でできること
交通事故における「工学鑑定」は、端的に述べれば、「物理学の法則に基づけば、こういう衝突状況であったとしか考えられない」という答えを導き出すことにあります。
解析は、車両の傷や道路に残されたタイヤ痕、また車両の停止位置など、事実認定できることを基に計算していきます。
そうしますと例えば、「力積(運動量保存の法則)」を用いた解析により、「車両の衝突直前の速度」の特定や、「対象物に対してどの程度の力が加わったのか」を特定することができます。
「車両の衝突前の速度」の特定
「力積(運動量保存の法則)を利用した鑑定」では、物的証拠が十分に揃ってさえいれば、衝突時
の速度や、ブレーキをかける(危険を意識する)前の速度を特定することができます。
また、車両と「自転車・歩行者」が衝突した場合では、衝突位置からどこまで「自転車・歩行者」が
飛ばされたかで、衝突時の車両の速度を割り出すことができます。
さらに、車両の損傷を解析すれば、「自転車・歩行者」との衝突角度を特定できますし、フロント
ガラスに衝突痕がある場合、「自転車・歩行者」側の速度も割り出すことができる可能性もあり
ます。
「こんなことが何の役に立つの?」というような事故の痕跡が、事故状況を特定する大きなヒン
トとなることも少なくありません。
もっとも、これら工学鑑定は、「記録された事実を基にしている」ということに気をつけてくださ
い。現状では、ほとんどの場合、警察が作成した「実況見分調書」の情報に基づいて工学鑑定が
なされています。
しかしながら、「実況見分調書」に記載された情報が、必ずしも全て正確であるとは限りませ
ん。経験上ですが、不正確な情報(特に見取図内の情報)や、誤解を招くような記載方法も散見
されます。
東海DCでは、「実況見分調書」の情報だけに頼らず、可能な限り現地調査を実施し、埋もれた
鍵となる情報がないか写真や資料を精査して解析にあたっています。
「対象物に対してどの程度の力が加わったのか」を特定
「損傷」を工学鑑定する場合、「どのくらい凹んでいるから、これくらいの力が働いた」という考
え方ではなく、「これくらいの力が働いていると算出されるので、その損傷は本件事故で形成さ
れたものと考えられる」という考え方をします。
例えば、物体が床に落下したとします。落ちた高さと、物体の重さから、床に与える力を算出する
ことができます。
これを利用すれば、普通に走っていただけなのに、不運にも、道路の陥没部分にタイヤが落ち込
み、結果リム打ちから、タイヤホイルを損傷させてしまった場合でも、車両重量や、タイヤ口径、
穴の深さから、「どの程度の力がホイールに加わったのか」を算出することができます。
また、トレーラーが、トラックスケールの上で誤って荷台の連結を外してしまい、トラックスケー
ルを破損させたとしましょう。この場合でも、荷台重量、レッグの接地面積、レッグの落下距離
から、「どの程度の力がトラックスケールに加わったのか」を算出することができます。
このように「力積」を利用した解析によって、対象となる損傷と当該事故との関連性や整合性を
示すことができるのです。
費用の目安
◎鑑定費用 220,000円~(税込)
※これまでの実績に基づく価格帯は20~50万になります。
事前に鑑定が可能か検討する際に、資料精査として33,000円~(税込)を頂戴しております。