『動画(画像)解析』の具体的手法
前回の解説に続き、ドライブレコーダー映像を有効に活用するための具体的な動画解析の手法と注意点について詳しく説明します。
●AIを活用した解析
AIを使用した解析手法では、映像中のパターンやオブジェクトを認識し、自動的に抽出することが可能です。これにより、事故の瞬間や主要な出来事を迅速かつ正確に特定できる可能性があります。また、AIは映像内の異なるオブジェクト(車両、歩行者など)を検出し、それらの動きをトラッキングすることができます。これにより、事故の関与者や動きを明確に把握することができる可能性があります。
超解像技術は、画像や動画の解像度を向上させるための技術ですが、AIを活用することで高い性能を発揮します。低解像度から高解像度への変換により、画像や動画の視覚的品質を向上させたり、細かいディテールが失われてしまった画像でも、超解像技術を用いることでそれらのディテールを復元することが可能です。また、超解像技術を用いることで、顔認識や物体検知などのタスクの性能が向上します。
弊社ではAIや超解像技術を用いた解析は行っておりませんが、近い将来、AIを用いた速く・詳細で正確な解析ができるようになるかもしれません。なお、ここでは詳しく触れませんが、私が関わらせていただいている「合同会社nitro」では、Slam技術を用いたドライブレコーダーの解析を研究しており、ドライブレコーダーの映像から車両軌跡を自動で図面上に描けるようになる日も近いかもしれません。
●手動によるフレームバイフレームの解析
解析者が手動でフレームバイフレームで映像を一コマずつ丁寧に(そして繰り返し)確認していく手法です。 画質が悪く不鮮明な映像や、瞬間的な出来事を解析する場合、この手法によって高い精度で細部まで確認できます。
また、 解析者が映像内のオブジェクトや動きを手動でトラッキングすることで、AIだけでは難しい微細な情報も把握できます。特に細かい部分の解析において重要です。
弊社では上記の手動による動画解析を行っています。これは解析手法や解析内容について自ら説明することができるようにするためでもあります。
●解析ツール
解析に使用するソフトウェアは最新かつ信頼性の高いソフトウェアを選定する必要があります。弊社では「TMPGEnc Video Mastering Works 7」(株式会社ペガシス)というソフトウェアを使用して、対象となる映像をコマ送り静止画像に変換したり、クロップ(画像の一部分を切り出すこと)したり、見やすくするため画像処理(ガンマ補正・ノイズ除去・シャープネス等)をしています。
また、映像から車両の位置を特定したり速度を特定するためには正確な現場調査(計測)が必要となります。加えて、車両の損傷写真の精査や、実況見分調書に記載された痕跡等の確認作業も必要です。
さらに、他のドライブレコーダー映像や防犯カメラの映像があれば、同様に解析して互いの情報を補ったり、結果に齟齬がないかを検証することができます。また、これからはEDRデータのようなデジタルデータと組み合わせたり照らし合わせることでより正確な解析が可能となります。
また、解析ツールからは少し話が離れますが、現在弊社では、ひとつの映像に対して2名の解析者が合議して解析を進め、二重チェックをするようにしています。複数の解析者が映像を独立して確認し、異なる視点からの結果を比較検討することで、主観的な要素を排除し客観性を確保するようにしています。個人的にこの点は極めて重要な要素だと感じています。
●まとめ
今回は、動画(画像)解析の具体的手法について掘り下げて説明しました。この「ドライブレコーダーの可能性」シリーズは、これで一旦終わりとさせていただますが、弊社のWebサイトに訪れてくださった方に、少しでも興味を持っていただけるような情報をご提供できるよう、今後も発信を続けたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
私は、映像が記録として多く残るこの現代社会において、この「動画解析」は不可欠な技術である確信しています。そしてこの「動画解析」の技術は、さらなる向上が期待されている分野であると云えるでしょう。弊社としても、様々な事件・事故の真相解明に貢献できるよう、これからも研鑽を重ねていきたいと思います。