事故状況聴取をするとぶち当たる問題、それは多くの当事者が事故状況を覚えていないということです。

私自身、多くの交通事故当事者の方から事故状況をヒアリングしましたし、他の調査員があげてくる聴取レポートも何千と目を通していますが、多くの方が、「たぶん~だったと思うけど・・」「よく覚えていない」「いつもは○○だから、このときも○○だったはず」と曖昧な説明をされます。

しかし、これは至極当然のことだと思います。殆どの場合、事故に遭われる方は直前まで事故が発生することを予見していません。ひとことで言えば危険予測をしていません。よって、具体的な危険を感じるのは衝突の直前であり、有効な回避措置もとれないうちに事故に至ったというケースが殆どです。

ですから「相手車を認識した地点」と「危険を感じた地点」と「回避措置をとった地点」が同一の場所(地点)で説明されることは珍しくありませんし、衝突地点まで同じと説明される方もおられます。実際には車両が動いている状態での出来事ですから、それぞれ地点が異なるはずですが、当事者本人としては、それがほぼ同時に起こったように記憶されています。

また、事故の衝撃やショックで、衝突前後の記憶を無くされている方も少なくありません。いわゆる逆行性健忘という症状です。この場合、何かの拍子で思い起こされることもありますが、最後まで思い出せない方も多くおられます。※話は逸れますが、だからこそ、ドライブレコーダーを搭載されることをお勧めするのです。

事故状況をヒアリングするには、こういった事故に遭われた方の特殊な事情についてよく理解して望む必要があります。この話は次回に続きます。