『動画(画像)解析』の重要性

1.ドライブレコーダー映像の解析における課題 ドライブレコーダーが交通事故の証拠として有用であることは明らかですが、その映像を正確に解釈することは容易ではありません。映像には様々な要素が含まれ、時には錯覚や誤解を招くこともあります。

まず、ドライブレコーダー映像は単なる視覚情報に過ぎず、音声や臭い、触感などの感覚情報は得られません。これにより、事故の状況や当事者の心情など、全体の理解が難しくなります。また、映像の角度や解像度によっても情報の欠落が生じ、正確な判断が難しくなることがあります。

さらに、映像は静止画よりも動画の方が情報が多くなりますが、高速で発生した事故や瞬間的な出来事に対応するのは限定的です。このため、事故の原因や経緯を正確に解明するには、追加の情報や裏付けが必要です。

2.動画(画像)解析の重要性 動画(画像)解析は、ドライブレコーダー映像をより深く理解し、客観的かつ正確な情報を引き出すための重要な手法です。解析を通じて以下のような利点が得られます。

  • タイムスタンプの活用:映像の時間情報を利用して、事故の発生瞬間や重要な出来事を正確に特定できます。これにより、事故の経緯を時間軸に沿って再構築することが可能です。しかし、詳細なタイムコードが標示されることはないため(概ね分秒程度まで)、ソフトウェアを使用して、映像内にレイコンマレイ1秒までのタイムコードを挿入し表示させるのが実際的です。尚、フレームレートで1コマあたりの秒数を割り出す方法もありますが、書面にすると煩雑になりやすく直感的に伝えにくくなるため、弊社ではその手法は採用していません(初期の頃でやめました)。
  • オブジェクトのトラッキング:解析ソフトウェアを使用して、映像中の車両や歩行者などのオブジェクトを追跡します。これにより、事故の主要な関与者や動きを把握しやすくなります。実際に解析を依頼される映像は、画質が悪く不明瞭なものが多いため、解析者が一コマずつ前後のコマと比較確認しつつ、精査しながら手作業で行っています。
  • 複数の角度からの情報統合: 複数のドライブレコーダーがある場合、それらの映像を統合して全体の理解を深めることができます。これにより、主観的な視点の補完や事故の全体像の理解が可能です。ソフトウェアを使用して、時間を同期させた2つの映像を1画面に表示させた映像を作成することにより、第三者が状況をより正確に把握することを助けることが可能です。このような動画編集作業も弊社の得意とするところです。

3.解析結果の有用性と限界 動画(画像)解析の結果は、事故の真相を明らかにするために非常に有益ですが、注意が必要なポイントも存在します。

  • 解析ソフトウェアの信頼性:解析に使用するソフトウェアの信頼性や正確性は慎重に検証する必要があります。不適切な解析が行われると、逆に混乱を招く可能性があります。有償で解析を引き受けているにもかかわらず、動画解析にフリーソフトを使用している鑑定士や業者が散見されますが、個人的にはその姿勢には疑問を感じます。フリーソフトの正確性を疑っているという訳ではありませんが、プロであればやはり、信頼性の高い解析ソフトウェアを使用するのが適当であると考えます。
  • 主観的な要素の排除: 解析結果を利用する際には、できるだけ主観的な要素を排除し、客観性を重視する必要があります。異なる解釈が生じる可能性を最小限に抑えることが重要です。これについて弊社では、解析者ひとりの観点で完結することがないようにしています。別の解析者が改めて内容を確認することで、主観的な要素を排除するようにしています。
  • 他の証拠との組み合わせ: 解析結果だけでなく、他の証拠や情報と組み合わせて判断することが必要です。複数の情報源を総合的に考慮することで、より正確な判断が可能となります。これについては、解析結果の信憑性を自らチェックする際にも極めて有効です。これをしないと、相手側から鋭い反論をされて、せっかくの解析が無駄になってしまうことがあります。

 次回は、具体的な動画(画像)解析の手法や注意点について詳しく掘り下げ、ドライブレコーダー映像を有効に活用するためのアプローチについて解説していきます。