車線変更が関係する事故では、「車線変更した車が70%、直進していた車が30%」というのが基本の過失割合とされています。

ですが、「急に割り込まれてぶつかったのに、なんで自分にも責任があるの?」と納得できないケースも多く、もめごとに発展することも珍しくありません。

そこでこの記事では、車線変更事故における過失割合の基本的な考え方、実際にあった裁判での結果をご紹介します。

車線変更による交通事故の過失割合

「車線変更による事故」といっても状況は実にさまざまで、少しの違いで過失割合が大きく変わるのが特徴です。

ここでは、よくあるケースの過失割合について説明します。

基本的には車線変更した側が70%

前の車が進路を変え、直進していた後続車とぶつかった場合、基本的な過失割合は「車線変更した車70:直進していた車30」とされています。

法律上、進路を変える側には「後方の安全をしっかり確認し、他の車の進行を妨げないようにする」という義務があるからです。

もちろん直進車にも注意義務はありますが、実際には避けきれない状況が多く、車線変更側の責任が重くなります。

交差点で車線変更した場合

交差点やその手前30メートル以内では、追い越しや車線変更が原則禁止されています。

そのため、この場所で急に進路を変えられると、後続の車は予測が難しく、避けるのがほぼ不可能と言えるでしょう。

こうした理由から、交差点付近での事故では「車線変更した車90:直進していた車10」と、車線変更側の過失がかなり重く見られる傾向にあります。

ウィンカーを出さずに車線変更した場合

道路交通法では、進路を変えるときにはウィンカーなどで合図を出し、それを3秒以上継続することが義務づけられています。

そのためウィンカーを出さずに進路を変え、後方車と衝突した場合、「車線変更車90:後方車10」と判断されます。

ゼブラゾーンを進行していた場合

ゼブラゾーン(導流帯)は、白い斜線で囲まれたエリアで、車両の流れをスムーズに誘導するために設けられています。

法律上、絶対に走ってはいけないわけではありませんが、みだりに侵入してはいけません。

そのため、双方がゼブラゾーンを走行中に事故が起きた場合、どちらにも注意義務があると見なされ、過失割合は「車線変更車50:直進車50」または「60:40」と判断されます。

強引な車線変更をした場合

並走している状態で、まだ前に出ていないのに無理に割り込もうとした―そんな強引な車線変更によって側面衝突が起きた場合、直進していた車は避けようがありません。

このようなケースでは回避するのが極めて難しいことから、裁判でも「車線変更した側に100%の過失がある」と判断された例が多くあります。

駐停車中の車両に追突した場合

道路の端に止まっている車に対して、車線変更してぶつかってしまったというケースでは「車線変更車10:駐停車車両0」となります。

これは、駐停車中の車は動いていないため、事故を避ける手段がないからです。

ただし、交差点付近や見通しの悪いカーブで停車していた場合、夜間に無灯火で停まっていた場合などは、過失が修正される可能性もあります。

車線変更による交通事故の判例

ここからは、実際に裁判で争われたケースをご紹介します。

渋滞中に車線変更し、直進車と接触した

渋滞中の道路で、ウィンカーを出さずに車線変更してきた車と、直進していた車が接触した事故です。

進路変更の合図がなかった場合、通常は「車線変更車90:直進車10」とされますが、この判例ではさらに進路変更側の責任が重く、「95:5」と判断されました。

裁判所は、「渋滞によって直進車がほぼ停止していた状況で、急な割り込みに対応するのは困難だった」として、直進車側の過失を小さく評価したのです。

(名古屋地裁 平成30年4月17日判決 自保ジャーナル2025号)

車線変更・急減速したところ、後方車が追突した

高速道路にて、タクシーが車線変更をした直後に急減速したため、後方を走っていた大型トラックが避けきれず追突した事故です。

裁判所は、タクシー側に「後続車の有無や速度を確認し、十分な車間距離を取るべき義務があったにもかかわらず、それを怠った」と判断。過失割合は「タクシー80:トラック20」となりました。

(東京地裁 平成28年10月11日判決 自保ジャーナル1989号)

まとめ

車線変更が関係する事故では、基本的に車線を変更した側の過失が70%とされますが、状況によって変動することもあります。

だからこそ重要なのが、「客観的な記録」です。ドライブレコーダーは、事故当時の様子を示す強力な証拠になります。

「ウィンカーを出していなかった」「急に割り込まれた」といった事実が映像に残っていれば、過失割合の判断にも大きな影響を与えます。

東海DCの映像解析では、事故状況を明らかにし、事故原因を追及するための資料を作成することが可能です。

過失割合でお困りの方は、弁護士を通じてご相談ください。