2023年の国内で起きた交通事故発生件数は約30万8,000件です。毎日約845件の交通事故が起きている計算になります。だれがいつ交通事故の被害者になっても不思議ではありません。

 ドライブレコーダー(以下ドラレコ)の動画は、交通事故の強い証拠になります。とはいっても「ドラレコの動画はあるけれどどうしたらいいのかわからない」「画像が粗くて肝心なところが読み取れない」という声もあります。

 今回は、交通事故でとくに被害者になったときに知っておきたい「ドラレコ解析の専門業者を利用するメリット」をお話しします。

・交通事故の被害者が知っておきたい意外な事実

 もしもあなたが交通事故の被害者になったとき、誰を一番に頼りますか?

 交通事故に詳しい「被害者側の保険会社」と答える人も多いのではないでしょうか。実は、被害者と接する機会が多い相手は加害者側の保険会社です。被害者側の保険会社とは接する機会は少ないでしょう。なぜならば、加害者側はたくさんの保険金を支払う可能性があり、積極的に動くことで少しでも支払う金額を抑えようとするからです。

 また「ドラレコの動画を警察に提出すればすべてが解決する」と思っている人も多いのではないでしょうか。警察は必要に応じて解析することはあっても、すべてのドラレコを解析するわけではありません。とくに物損事故(怪我等が発生していない事故)については、届け出を受理したという程度で、警察が積極的に動くことはまずありません。

 「交通事故の被害者になったら誰かが全面的に守ってくれる」と思っている人は、意外な事実に驚くかもしれません。

・被害者がドラレコ解析の専門業者を利用するメリット

 交通事故の被害者になると、意外と頼れる存在がいないことに気がつきます。そんなとき頼りになるのは、交通事故に強い弁護士なのですが、それでも、ドライブレコーダーの映像などの動かぬ証拠がないと、思うように交渉していくことができません。

 また、ドライブレコーダーの映像があっても、そこから事実を特定し、主張したい内容を示すには、映像内容を解析して書面化する必要があります。それをするのが、ドラレコ解析の専門業者です。※ちなみに、ドラレコ解析を謳う業者は多くありますが、ここでも見極めが大切です。

 ドラレコ解析の専門業者は、ドライブレコーダーや防犯カメラなどの動画データを解析し、主張を立証するための資料や、事故状況図作成などのテクニカル面をサポートします。交通事故の場合はドラレコや防犯カメラ、事故車に残された痕跡が大切な証拠になります。交通事故を扱う弁護士がドラレコ解析の専門業者を利用することもよくあることです。

メリット1:感情論ではなく冷静な分析ができる

 交通事故は「起こさない」が一番いいのですが、巻き込まれてしまうこともあります。被害者になってしまったら、まずは体の回復を優先しましょう。そして症状が安定したら示談交渉に向けて準備を始めます。交通事故の流れは、示談交渉を行い、成立したら示談金の支払いで終わります。しかし示談が不成立になったら調停や訴訟になり和解や判決によって損害賠償を受け取ります。

 スムーズに示談交渉を進めるポイントがドラレコの動画など客観的な証拠です。「ひどい運転がうつっている」「きっと100キロくらいだ」では感情ばかりがアピールされ、冷静な分析になっていません。専門業者ならばドラレコの動画から速度解析だけでなくわずかな音声や時刻など、さまざまな情報から多くの証拠を掘り起こすことができます。

メリット2:プロを味方につける心強さ

 交通事故の被害者になったら多くの人が弁護士を頼ります。弁護士に依頼すると、孤立無援の状況から心強い味方を得たような気持になるものです。さらにドラレコ解析の専門業者を利用すれば、弁護士に加えてテクニカル面のプロをも味方につけたようなものです。交通事故の交渉は長期に及ぶこともあります。多くのプロがそばにいることは、心の支えにもなります。

 任意保険に加入している場合は「弁護士費用特約」の有無を確認してください。弁護士費用特約は示談交渉などの費用を上限300万円まで保険会社が負担する特約です(※費用上限は保険会社によって異なりますので、ご自身の保険内容をご確認ください)。
 弁護士を通してドラレコ解析の専門業者を利用する場合、多くの保険会社がその利用料も特約の対象としています。ただし、裁判や交渉を進めていく上で必要な解析・鑑定であることが必須です。また解析・鑑定費用が適正であるか保険会社が見極めますので、必ず認められるものではないということに注意してください。

メリット3:納得できる事故解決

 交通事故の解決で一番大切なことは補償額ではありません。納得です。「これでよかった」と思える事故解決が最大のポイントです。納得できる事故解決をするためには「あやふやな点」を残さないことです。「ドラレコに気になる明かりが写っていたけど不鮮明だからあきらめた」や「被害者本人が証言できず真実がわからないまま終わった」では「あやふやな点」が残されてしまいます。

 ドラレコ解析の専門業者は、培ったノウハウでさまざまな角度からデータを解析し、映像が残した事実を明らかにします。事実を明らかにしたうえで導き出された結果は、納得できる事故解決につながります。

・専門業者の利用は加害者側にもおすすめ

 交通事故は加害者になることもあります。専門業者は、被害者側が提出してきた証拠資料が「本当に正確か」を検証することもできます。

 最近は「あおり運転」対策としてドラレコを搭載する人が増えています。あおり運転の加害者になった場合、つまり故意に事故をおこしたら加害者は保険を利用することができません。一方の被害者は加害者の承諾なく加害者の保険会社に保険金を請求することができます(自動車損害賠償保障法第16条第1項)。被害者に保険金を支払った保険会社は、政府に支払った金額を請求します。そして政府は加害者に請求するのです。加害者は大変な経済的負担を負います。

 本当にあおり運転をしたのならば論外ですが、もしも相手の誤解であったり「ドラレコで撮ったから」と一方的に言われたりしている場合は専門業者による客観的かつ冷静な証拠資料や相手の証拠資料の検証を依頼してもいいのではないでしょうか。

 あおり運転に限らず、自分の運転を冷静に見直せることも専門業者による解析を利用するメリットのひとつです。

・おわりに

 交通事故の被害者になると気が動転します。さらに話し合いには聞いたことがない専門用語が飛び交い、心細くなるものです。

 交通事故では「一人で頑張る」よりも「いかに味方をみつけるか」が長い戦いを乗り越えるポイントです。ドラレコ解析の専門業者は「テクニカルのプロ」です。心強い味方をつけて納得できる事故解決をしてください。