近隣で事件や事故が起きたときに「防犯カメラの映像を見せてほしい」と頼まれることがあります。確かに、カメラが重要な瞬間を捉えているかもしれませんが、見せるかどうかは慎重に考えるべきです。
無闇に映像を公開してしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれるかもしれません。
今回は、どう対応すればいいか、ケースごとに解説しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
映像を安易に見せないほうがよい理由

敷地内に設置した防犯カメラについて「映像を見せて欲しい」と頼まれたとき、すぐに了承するのは避けたほうがよいです。
安易に映像を見せると、トラブルにつながる可能性があるためです。ここでは、その理由についてわかりやすく説明します。
個人情報
防犯カメラで録画した映像で個人を識別できる場合、その映像は「個人情報」として扱われます(個人情報保護法)。例えば、顔がはっきり映っている場合は「○○さん」だとすぐに分かりますよね。
企業が防犯カメラを使用している場合は「個人情報取扱事業者」としての責任を負うことになります。映像の適切な保管や管理が求められ、もし映像が流出したり無断で利用されたりした場合には法的な責任を問われる可能性もあります。
詳しくは以下の記事にて解説していますので、あわせてご覧ください。

プライバシー権
防犯カメラを設置すると、意図せず他の人が映り込んでしまうことがよくあります。
例えば、駐車場のトラブル防止のためにカメラを設置したものの、画角の関係で隣の家の玄関まで映ってしまうなどのケースが考えられます。そのため、第三者に勝手に見せるとプライバシー権(憲法13条 幸福追求権)を侵害するリスクが生じます。
「プライバシー権」とは、自分の生活やプライベートな情報を他人にさらされない権利を指します。防犯カメラの映像を扱う際にはプライバシーに十分配慮し、無闇に開示しないことが大切です。
肖像権
「肖像権」とは、自分の容姿に関する権利です。無断で写真を撮られたり、公開されたりしないように法律で守られています(憲法13条 幸福追求権)。
特に、モデルやアイドルなどの有名人にとっては、肖像権が高い資産価値を持ちます。
例えば、あなたが経営するお店に人気俳優が訪れたとします。もし防犯カメラに映った映像を勝手にファンに見せてしまうと肖像権の侵害にあたるため、注意してください。
「映像を見せて」と依頼された場合の対処法
「防犯カメラの映像を見せてほしい」と頼まれたとき、どう対応すればいいのか迷ってしまいますよね。
基本的には映像を見せる義務はないのですが、状況によって適切な対応は変わってきます。
ここでは、ケースごとにどのような対応がベストなのか紹介していきます。
映っている本人の場合

映像から特定の個人を特定できる場合、個人情報に該当します。本人が開示請求書を持参したなら、個人情報保護法に従って対応する必要があります。
ただし、映像には他の人も映り込んでいることが多く、そのままデータを渡すと他の人のプライバシーを侵害してしまうかもしれません。
本人からの依頼でも、すべての映像を簡単に見せるのは避けましょう。例えば「その人が映っている部分だけを見せる」などの工夫を施します。
もし、映像から本人だと確認するのが難しかったり、どう対応すればいいのか迷ったりした場合は警察に相談しましょう。
一般人(第三者)の場合
近隣住民やお客様から「防犯カメラの映像を見せてほしい」と頼まれた場合、開示は一旦保留するのが賢明です。ただ消えてしまわないようにデータの保存はしてください。
たとえ「事故の状況がカメラに映っているかもしれないから」と言われても、その人が加害者なのか被害者なのかも分からないことが多いため、安易に映像を見せるのは避けたほうがよいです。
このような場合には「まずは警察に相談して、警察と一緒に来てください。警察から正式な開示依頼書があれば対応します」と伝えるとよいでしょう。
とはいえ警察は民事不介入ですから、警察が一緒に来てくれないケースもあります。そのときは弁護士を通して正式な開示依頼をしてほしいと伝えるとよいでしょう。
弁護士の場合
相手が弁護士だからといって、すべてが正規の依頼とは限りません。まずは映像を何の目的で使うのかを確認し、開示するかどうか、またどこまで見せるかを慎重に判断しましょう。
少しでも怪しいと感じたら、弁護士の登録番号を聞いてみてください。番号をすぐに答えられない、あるいははぐらかすようなら注意が必要です。
日本弁護士連合会の公式サイトで「弁護士検索」ができるので、名前や登録番号、所属弁護士会で調べてみましょう。検索しても出てこない場合は、弁護士を名乗った偽物の可能性があります。
警察の場合

「店舗前の道路で事故が起きた」など、防犯カメラにその様子が映っている可能性がある場合、警察から映像の提供を求められることがあります。協力することをおすすめしますが、必ずしも義務ではないので拒否することも可能です。
映像を提出する際は、相手が本当に警察であるかを必ず確認してください。特に私服の場合、一般人が警察を装っている可能性も考えられるので要注意です。
本物の警察であれば「捜査関係事項照会書」を提示してくれるため、受け取ったうえで映像データを渡すようにしましょう。
裁判所の場合
先述の通り、「映像を提供してほしい」と依頼された場合、応じるかどうかは基本的に任意です。
ただし、裁判所が「差押許可状」を発行して正式に要請してきた場合は例外です。このとき映像は法律上「差押え」の対象となり、所有者や管理者には提出義務が生じます。
防犯カメラ映像を提供する場合のポイント
防犯カメラの映像を提供することを決めたら、次の点を確認しておきましょう。
- 該当日時の映像が残っているか
- 画質や音声は鮮明か
- どの方法で提供するか
それぞれ順に確認していきます。
該当日時の映像が残っているか
事件や事故が起きた時間帯・場所をまず確認しましょう。
防犯カメラは一定期間が過ぎると古い映像が自動的に上書きされる仕組みのものが多く、1週間以上前のデータだと削除されている場合もあります。
また、トラブルの現場がカメラの死角にあれば、そもそも映っていません。一度再生して、該当の場面が残っているか確認しておきましょう。
画質や音声は鮮明か
映像が証拠として利用できるほど、はっきり映っているでしょうか。画質が低く人物や車種が判別できない、白飛びや黒つぶれで細部が見えにくいなどの場合は、証拠としての価値が下がってしまいます。
例えば400万画素や800万画素のカメラであればクリアな映像を残せますが、200万画素だと遠くの対象物を細部まで確認できないでしょう。
画像が荒くてもそのまま提出して問題ありませんが、この機会に見直してみるのもよいかもしれません。
どの方法で提供するか
ドラレコの映像を渡す方法には、主に次の3つがあります。
- 映像データをコピーして渡す(USBメモリやDVDなど)
- その場で視聴してもらう(提供者立ち会いのもと再生する)
- クラウドサービスを使って共有する
一般的には、指定された時間帯の映像をコピーして渡すケースが多いですが、依頼者がどの方法を希望しているかを聞いておくとよいですね。
まとめ
店舗や工場に設置した防犯カメラの映像を「見せて欲しい」と依頼された場合、どうしたらいいのでしょうか?
防犯カメラの映像は、事件や事故の解決につながる証拠になることがあります。しかし、頼まれたからといって安易に映像を見せるのは非常にリスクが高い行為です。この記事で紹介したポイントを参考にしながら、映像を見せるべきかどうか冷静に考えてください。
また、もし映像が荒くて内容がよく分からない場合は、映像解析サービスの利用を検討してみるのもよいでしょう。
東海DCは専門技術を駆使して、低画質の映像からでも重要な証拠を見つけ出すことが可能です。防犯カメラの映像を最大限に活用したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
