交通事故はある日突然起こります。そして、経験したことのない不安の中でやらなければならないことが補償や報告などの書類作成です。

 とくに事故状況図は、様々な交渉する上で、関係者に状況を正確な理解をしてもらうために大切な書類です。今回は、事故状況図の基礎知識から書き方ポイント、そして書けないときの対処方法までくわしく解説します。

・事故状況図(事故発生状況報告書)とは

 事故状況図(事故発生状況報告書ということもある)とは、交通事故が起きたときの状況をくわしく書いた書類です。似た名前の書類に「交通事故証明書」がありますが、交通事故証明書は警察が作成する書類で「事故があったことを証明するもの」です。内容は事故の日付や場所などごく限られたものです。

 一方、事故状況図は事故の補償金を請求する人が作成します。具体的な数値や図を使って、より細かい事故の内容を書き保険会社に提出します。交通事故証明書との大きな違いは目的です。事故状況図の目的は「過失割合」を算出することです。

 過失割合とは、加害者と被害者のどちらにどれだけの過失(不注意)があったかを割合で示したものです。例えば、被害者が100万円の損害を受け、過失割合が加害者80%で被害者20%ならば、被害者がもらえるお金は80万円になります。

 過失割合は、損害額に大きく影響を与えるものであり、過失割合を決める重要な資料が事故状況図です。

・事故状況図の書き方3つのポイント

ポイント1:客観的に書く

 事故状況図は、保険会社に事故の状況を伝える書類です。事故の様子を図と文章で書く欄があります。事故の被害者になると感情的になることもありますが、冷静かつ客観的に書くことで信ぴょう性も上がります。

 例えば「後ろからすごいスピードでバーンとぶつかってきた」と書くよりも「赤信号で停止していたら後方からブレーキをかけることなく追突された」と書いてあった方が客観的です。

ポイント2:正確に書く

 「事故状況図によって過失割合がきまる」と思えば「おおげさに書いておこう」「小さい嘘ならバレないだろう」と思う人がいるかもしれません。しかし、嘘はいけません。加害者も被害者も「信号は青だった」と言えば、どちらかが間違えているか噓をついていることになります。証言に食い違いがあれば、客観的な証拠によって事実確認をすることになるでしょう。嘘をついてしまえば証拠を出すことができません。

 交通事故ではドライブレコーダー(以下ドラレコ)の動画が重要な証拠になります。ドラレコの動画や車体のキズなどを基にして正確に書きましょう。

ポイント3:シンプルに書く

 事故状況図は伝えたいポイントを絞ってシンプルに書きましょう。シンプルに書くメリットは、伝えるべきポイントが強く打ち出せることです。

・事故状況図を適当に書いてはいけない理由

 事故状況図の用紙には「詳細に書かなくてよい」「簡単に」と書いてあるため「適当に書いてもいい」と誤解されることもあるようです。しかし、事故状況図には適当に書いてはいけない理由があります。

 また、話は少しそれますが、警察との実況見分においてもこの点は非常に重要なポイントです。面倒になって適当に答えるようなことは絶対しないでください。また警察官から誘導されて、本当はよくわからないことを、わかっているかのように答えることは絶対に避けてください。

<過失割合に影響するから>

 過失過失割合について被害者が知っておきたいことが2つあります。

 1つ目は「保険会社の勢いに負けて提示された過失割合を受け入れないこと」です。お金を支払う加害者側の保険会社がパッと過失割合を示して示談を迫ってくることがあります。わけもわからず適当に書いた事故状況図によって過失割合が決まり、勢いに負けて示談を受け入れてしまったら後悔することになるでしょう。加害者側に有利な過失割合を提示させる余地を残さないためにも事故状況図を適当に書くことはやめましょう。

 2つ目は「保険会社が必ずしも正確な過失割合を提示するとは限らない」です。保険会社は、支払う金額を少しでも抑えるために加害者側に有利な過失割合を示すこともあります。適当な事故状況図は「そちらの判断におまかせします」と言っているようなものかもしれません。

<証拠のひとつになるから>

 事故状況図は事故の詳細を書いた書類です。書類は残ります。加害者側の反応によってコロコロと事故状況図を書き直すようでは信ぴょう性に欠けます。

 交通事故では実況見分調書や事故状況図などたくさんの書類作成があります。それらひとつひとつが証拠になると意識し、丁寧な対応のつみ重ねが納得できる事故解決につながります。

・事故状況図が書けないときのかしこい対処方法

 事故状況図は、過失割合を決める大切な書類です。正確かつシンプルでしっかりと相手を説得できる内容が求められます。しかし被害者本人の声が聞けない場合や運転免許証を持っていない人にとって事故状況図を書くことはとても難しいことではないでしょうか。また車体のキズや不鮮明なドラレコの動画を解析することは素人には難しいことです。

 さまざまな理由で事故状況図が書けないときにおすすめする対処方法は「専門業者への依頼」です。専門業者には知識だけでなくノウハウと経験があります。必要に応じてドラレコや防犯カメラのデータを解析しスキのない事故状況図を作成することができます。

・おわりに

 ドラレコを搭載する車は増えています。しかし実際に事故の当事者になるとドラレコの動画を「どのように活用したらいいのか」「どの部分が重要なのか」がわからず宝の持ち腐れになることがあります。ドラレコの動画は事故状況図作成の大切な資料です。納得できる事故解決をするためにも専門業者への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。